東京地方裁判所 昭和43年(ワ)10146号 判決
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〔判決理由〕逸失利益
(一) 休職による給与喪失分金三万七四一〇円
その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と確定すべき<証拠>によれば、原告主張のとおりと認められる。
(二)その余の逸失利益
<証拠>と弁論の全趣旨を総合すれば、原告は前記認定のとおり本件事故当時外務職として三級一〇号俸(本俸金二万七〇〇〇円、暫定勤務地手当金一二六〇円、昭和四二年四月俸給切替により本俸金二万九二〇〇円、暫定勤務地手当金一三八〇円となる)の給与を受けていたものであるが、本件受傷の結果、昭和四二年一一月一日付をもつて庶務会計課勤務守衛職に職種変更を受け、その俸給も技能職三級一四号俸(本俸金二万八六〇〇円、暫定勤務地手当金一五四〇円)となり、また前記の休職により昭和四一年一二月から昭和四二年五月までの間に予定されていた定期昇給二回が延伸となつたこと、また、原告は右のごとく職種変更を受けなければ、その後も外務職として定期昇給を受け得たにかかわらず、それが受けられず、その結果外務職として受けうる給与と技能職として支給される給与との差額に相当する得べかりし利益を喪失し、またこれに伴い右給与額を基準として算出支給される年度末手当及び期末手当についても右と同様それぞれの差額に相当する得べかりし利益を喪失したことが認められる。
なお、原告は右の逸失利益につき原告が六〇才に達する昭和七五年度分まで請求するのであるが、<証拠>と弁論の全趣旨を総合すれば、原告は昭和一五年二月二二日生れであり、昭和四三年四月一日に東京逓信病院において自覚的にがんこな悪心、頭痛があり特に意識障害の発作を認めるものとして前記認定のとおり労働基準法施行規則別表第二、第七級三号に該当する後遺障害があるものと認定され、その後昭和四四年七月頃まで主として精神安定剤の服用による治療を続けたのであるが、現在においては右の意識障害の発作もなく気候の変り目に頭痛、吐気等の自覚症状が存する程度であり、職場における全逓信労働組合の執行委員をつとめているものであること及び原告がさらに回復し希望するならば再度外務職に復帰する余地もあることが認められる。この事実によれば、原告が本件受傷の結果今後のある期間をその意に反し技能職にとどまることを余儀なくされるとしても、その主張のとおり六〇才に達する約三〇年間が同様であると断定することは困難であり、またその復帰の時期等については、さらに将来の診断をまたなければならず、したがつて原告が主張する将来の逸失利益が生ずるにしてもその具体的な額を判定することは現時点においては到底なし得ないのであるから、本件においてはすでに逸失利益の額が現実化したと認められる本件口頭弁論終結時の昭和四六年三月分までの損害額を算定するにとどめ、その余の将来の逸失利益については、右のごとく不利益を受けるであろう事情を後記慰藉料の算定において斟酌するにとどめる。
(1) 職種変更、定期昇給延伸による給与喪失分 金九万七一七〇円
(一) 昭和四二年六月から昭和四四年三月分までの給与差額
原告が本件受傷の結果定期昇給を延伸され、また外務職から技能職に職種変更を受けたことにより給与差額に相当する得べかりし利益を喪失したことは前記認定のとおりであるが、右期間におけるその金額が原告主張のとおりであることについては、本件全証拠によつてもこれを確認することができない。
(二) 昭和四四年四月から昭和四五年三月分までの給与差額
金三万〇九六〇円
(三) 昭和四五年四月から昭和四五年一一月分までの給与差額
金一万九二〇〇円
以上については前記甲第三〇号証、同第三一号証の一、二証人斉藤武彦の証言を総合して、すべて原告主張のとおりと認める。
(四) 昭和四五年一二月から昭和四六年三月分までの給与差額
金九六〇〇円
右の各証拠によれば原告のこの期間における給与の差額は右(三)と同様月金二四〇〇円であるから、右期間における給与の差額は合計金九六〇〇円となる。
(2) 年度末手当及び期末手当喪失分
金五万〇八〇九円
<証拠>によれば、原告はその主張のとおりの割合による夏季手当及び年末手当並びに毎年三月に年度末手当が支給されることになつていたにかかわらず、本件受傷により次に認定するとおりその全部又は一部の支給が受けられず、又は前記のとおりの差額分について得べかりし手当を喪失したことが認められる。
(一) 昭和四二年度末手当喪失分
金一万三六九五円
その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるので真正な公文書と推定すべき甲第五号証により右のとおり認める。
(二) 昭和四二年度夏季手当喪失分
金一万五八二六円
その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるので真正な公文書と推定すべき<証拠>により右のとおりと認める。
(三) 昭和四二年度年末手当、昭和四三年度年末手当、期末手当、昭和四四年度年末手当
右については、本件全証拠を検討してみても、その金額が原告主張のとおりであることを確認することができない。
(四) 昭和四四年度夏季手当喪失分
金三六一二円
(五) 昭和四四年度年末手当喪失分
金六七〇八円
(六) 昭和四五年度年末手当喪失分
金一四七〇円
(七) 昭和四五年度夏季手当喪失分
金金三三六〇円
(八) 昭和四五年度年末手当差額分
金六二四〇円
(九) 昭和四六年度年末手当喪失分
金一三六八円
原告の昭和四四年四月以降における給与差額右(2)の(二)ないし(四)において認定したとおりであり、これと<証拠>によつて右(四)ないし(九)のとおり認定する。
(3) 年末年始繁忙手当喪失分
<証拠>によれば、牛込郵便局に勤務するものについては年末年始の特別繁忙期間につきその主張のとおりの年末年始繁忙手当が支給されることに定められていたこと、原告の昭和四一年一二月における時間外勤務手当は一時間につき金一八五円であつたこと及び原告は本件受傷により休業しなければ、右の年末年始の繁忙期間に当りすくなくとも二五日間の勤務と六七時間の時間外勤務が可能であつたことが認められ、また昭和四一年度の年末年始にかけて原告が本件受傷による休業を余儀なくされたこと及び外務職から技能職に職種変更を受けたことは前記認定のとおりであるから、原告は昭和四一年度以降昭和四五年度の年末年始にかけて次の計算による年末年始繁忙手当を喪失したものというべきである。
(一) 昭和四一年度分
金一万九九三一円
(185+45)×67+280×25=19.931
(二) 昭和四二年度以降昭和四五年度分
金一万五五〇〇円
{(300−1.45×25}×4=1,5500)
(4) 昭和四六年度分以降の年末年始繁忙手当喪失分退職金喪失分
右については、すでに前記(二)その余の逸失利益の項において将来の逸失利益喪失分について述べたと同様であつて、その主張のとおり向後約三〇年間に当る繁忙手当喪失分及び約三〇年後に生ずるであろう退職金を現時点において的確に認定することはできないから、前記(二)と同様原告が将来受けるであろう不利益を後記慰藉料の算定の事情として斟酌するにとどめる。 (原島克己)